2025.10.16
[KOKUYO Vol.4]
コクヨ社員が編集部員に。
自社を見つめ、物語を紡ぐ
オウンドメディアができるまで
私たちがウェブリニューアルを通して挑んだことのひとつに、コクヨの新たなオウンドメディアの立ち上げがあります。
目指したのは、プロの編集チームの力を借りながらも、最終的にはコクヨ社員が編集者となり、育て、運営していく「内発的なメディア」。
Vol.4の「マガジン編」では、立ち上げの背景にあった課題とオウンドメディ

▼過去の記事はこちら
・【KOKUYO Vol.1】イメージを刷新し、コクヨの真価を宿す。複雑な大組織を「人への想い」で繋いだサイト制作
・【KOKUYO Vol.2】「らしさ」をどう探り、どう表現したのか? 構成・デザイン・言葉に宿るこだわりを紐解く
・【KOKUYO Vol.3】ターゲットの異なる2つの事業領域に横串を通す。コクヨプロダクトサイト共通の価値
目次
分散していた発信を束ね、「コクヨの声」として再編集
リニューアル以前のコクヨのウェブサイトでは、各部門や製品担当者ごとに個別にコンテンツを制作しており、読みものコンテンツが点在。オウンドメディアだけでも、実に約22メディアが存在するという状況でした。
良質なコンテンツが豊富にあったにもかかわらず、発信の場が分散してしまっていたことで、ユーザーに届いていない情報も少なくなく、「コクヨとして何を伝えたいのか」という全体像が見渡しにくくなっていました。
また、プロジェクトやサービスによっては発信が十分でなく、中にはその存在自体が知られていないものも数多くあることがわかりました。
このような課題を受け、私たちは新たに「マガジン領域」の立ち上げを提案。
・各所で発信している読み物コンテンツを集約し、発信力を高めるとともに、SEO観点から新たな集客導線をつくる。
・社内報の役割も担い、インナーブランディングも行える場として、社員のモチベーションや意識醸成にもつなげる。
上記の2点をマガジン領域のミッションとして掲げ、構想を具体化していきました。
整理できない曖昧さこそ、コクヨらしさ
コーポレート領域の情報整理で、すでに私たちはコクヨの新しい取り組み(新規事業、サステナブルな取り組み等)の仕分け作業に着手していました。
分類のためにグルーピングをしていくと、何通りものパターンができていきます。さらに、1つの取り組みが複数のグループに所属することもあり、MECE(漏れなく、ダブりなく)のような基本的な考え方では整理しきれませんでした。
そこで発想を転換し、「きっちり整理できないカオスさや曖昧さ」もコクヨらしさの一部であると捉え、無理に線引きしてカテゴライズをすることをやめることに。マガジンでは、この「曖昧さ」を活かしつつ、存分に表現できる設計を目指していくことになりました。
「概念図」から生まれた3つの編集的観点と構造
デザインや実装を進めるため、マガジンの戦略や具体的なコンテンツを決める前に、ワイヤーフレームの提案が必要となりました。
そこで私たちは、情報設計から着手。
ヒアリングから得たこと、資料から読み解いたこと、そしてコクヨのみなさんが日頃よく使う言葉など。マガジンのコンテンツテーマになり得る、ありとあらゆるキーワードを並べ、整理していきました。

キーワードが一通り揃ったところで一覧を眺めると、それらが2つの観点に大別できることを発見。「第4次コクヨグループ中期経営計画」で制作していた図版の考え方が、突破口になりました。
これらの考え方をもとに生まれた一枚の「概念図」が、現在のマガジンの根幹を形成しています。


・ナレッジ(ヒント):コクヨの知恵や知見
・カルチャー:コクヨの企業文化や歴史、思想
「ナレッジ(現:ヒント)」「カルチャー」という、この2つの編集軸があることで、文具・家具・空間・通販といった事業領域やプロダクト単体の枠組みを超え、コクヨの知見や思想そのものを伝える発信が可能になりました。
これにより、表層的な情報にとどまらず、より深層にある考え方や思想までも伝えることができます。さらに、ひとつのプロダクトや出来事も、どの軸から切り取るかによって、「ナレッジ」にも、「カルチャー」にも分類できる柔軟性が生まれたのです。
こうして、当初の課題としてあったコクヨのある種のカオスさを吸収できる構造が出来上がりました。きっちりとルール立てて仕分ける箱を用意するのではなく、編集軸という「ものの見方」を提示することで、重複を許容し、枠組みに余白を持たせています。
トップページの構成にもこの概念図の思想が反映され、ユーザーはカルチャーとナレッジを自由に行き来できる設計になっています。

さらにもうひとつ、忘れてはならないのが「スタイル」という考え方です。
Vo.3プロダクトサイト編でも、異なる事業領域に横串を通す仕掛けとしてご紹介しました。
マガジンは、「スタイルカタログ」という企画を通じて、各領域の多様なスタイルが格納される場として機能しています。それらは、事業部間の垣根を超えてページのなかで共存し、シナジーを生み出しながらひとつの世界観を形づくっています。
「ナレッジ(ヒント)」「カルチャー」「スタイル」という3つの編集軸によって、新しい取り組みやプロダクト、コクヨの人たちやその裏側にあるストーリー、スタイルの提案までも伝えることが可能になったのです。


ローンチを迎えて。力を合わせて制作した39記事
ワイヤーフレーム提案の後工程である企画・戦略、記事制作フェーズでは、編集のプロフェッショナル集団であるitsknのみなさまに参画いただき、プロジェクトを牽引していただきました。
2025年10月2日のローンチ時点では、itsknチームの制作記事が10本、コクヨの制作記事が29本、合計39本の記事を揃え、立ち上げとしては充実したコンテンツ数でスタートを切ることができました。また、コクヨ社内だけではなく、必要に応じて他社製品や外部の人材の力を借りることで、より豊かにコクヨの世界観を表現することができました。

おわりに
オウンドメディアを運営することに意義はあるのか?
第一回目のマガジン会議のことを、今でもよく覚えています。
まとめ役を担ってくださった広報部門のみなさんを中心に、各部門を代表するメンバーが1つのテーブルにつき、目指す情報発信のあり方や各部門の課題点を話し合えたことは、振り返れば、とても大きな一歩だったのではないかと思います。
制作過程では、「オウンドメディアに意義が見出せない」「記事制作の工数がかかりすぎる」といった不安の声もあがりました。限られた期間のなかで39記事を制作し、メディアを立ち上げることは、決して容易なことではありませんでした。それでも、設計時に描いていた理想の形でローンチを迎えられたこと自体が、ひとつ成功といえるのかもしれません。
しかし、このマガジン領域は「つくって終わり」ではありません。
ユーザーや取引先、パートナー、そして自社社員に、“コクヨの実像”を知ってもらえるよう、自ら発信し続けること。オウンドメディアとしての発信力と存在意義を高め、育て続けること。
本当の意味で真価が問われるのは、むしろこれからなのだと思います。
大きな組織であればあるほど、点の情報発信ではなく、設計された「面」での情報発信が重要になります。日々刻々と変化し、有機的な成長を続けるコクヨという企業だからこそ、ともに動的に変化し続けられるメディアの存在は不可欠だったのだと思います。
いよいよ最終回となる Vol.5 では、「スペシャルコンテンツ」制作の舞台裏をご紹介します。どうぞお楽しみに!
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・【KOKUYO Vol.1】イメージを刷新し、コクヨの真価を宿す。複雑な大組織を「人への想い」で繋いだサイト制作
・【KOKUYO Vol.2】「らしさ」をどう探り、どう表現したのか? 構成・デザイン・言葉に宿るこだわりを紐解く
・【KOKUYO Vol.3】ターゲットの異なる2つの事業領域に横串を通す。コクヨプロダクトサイト共通の価値
取材・文=堀江由利子(mount inc.)