2025.10.3
[KOKUYO Vol.1]
イメージを刷新し、
コクヨの真価を宿す。
複雑な大組織を「人への想い」で
繋いだサイト制作
なぜ、この大規模なウェブサイトリニューアルは必要だったのか。
その理由は明快でした。
1つは、世間が抱く「コクヨ=文具の会社」というイメージと、実際の事業の広がりとの大きなギャップを埋めるため。
もう1つは、過去の分社化の影響によるウェブサイトにおける事業部間の連携の薄さを解消し、「WORK & LIFESTYLE COMPANY」としてのスタートをきるため。
2025年10月2日。
コクヨは、創業120周年の節目に合わせ、コーポレートサイトを全面リニューアルしました。

全5回に渡り、KOKUYOコーポレートサイト制作の舞台裏をお伝えしていきます。Vol.1ではプロジェクトの全貌をお届けします。
本プロジェクトに携わった私たちmountは、2022年から約2年強の期間にわたり、200名を超える関係者と対話を重ね、領域を広げ続ける大組織のウェブサイトをひとつに束ねるという巨大な挑戦に伴走しました。
キーワードは、「人」。
膨大な情報に埋もれそうになりながらも、コクヨという企業の「変わらないもの」を見つけ出し、それをウェブサイトに宿すことが使命となりました。
目次
1. 立ちはだかる大きな2つの課題「イメージギャップ」と「ウェブサイトにおける事業間の隔たり」
「コクヨと言えば?」
多くの人がその問いに「文具の会社」や「キャンパスノートの会社」と答えるでしょう。初期フェーズにおいては、プロジェクトメンバーでさえ例外ではありませんでした。
しかし、コクヨは文具だけをつくる会社ではありません。
文具を祖業としながらも、家具、空間、通販など、常に新しい発想で、多彩な領域へ拡大し続けてきました。
さすがは創業120周年。その広がりや奥行きを知れば知るほど、「世の中にまだ知られていないコクヨ」が存在することを実感。コクヨの魅力をありのまま、余すことなく伝えたいという思いと使命感が私たちの中に芽生えました。
そして、もう一つの課題。
それは過去にコクヨが分社化していた名残による、ウェブサイトにおける事業部間の連携の薄さです。事業ごとにドメインが分かれ、コクヨの企業全体としての姿が伝わりにくい状態になっていました。
そこで私たちが提案したのは、コクヨの「今まで」と「今」、そして「これから」を一つのサイトで表現し、事業間のシナジーを生み出すこと.つまり、事業の垣根を越えた共通の価値観を宿したひとつのサイトをつくるということでした。
「コクヨの魅力をありのまま伝える」「共通の価値観を軸にひとつのサイトにまとめる」。これらの2つのことを実現するウェブサイトをつくるために、mountチームが踏んだステップは、次の6つ。
・リサーチ・ヒアリング・ツアー
・方針策定
・情報設計
・素材(撮影・取材・コピー)制作
・デザイン
・実装
それぞれの工程に膨大な時間と試行錯誤が詰まっていますが、この記事では、特にプロジェクトにとってブレイクスルーとなった出来事を紹介します。
2. 徹底したヒアリングと企業文化の理解
「コクヨを知る」。
それが何もわからない初期段階において、約2ヶ月かけて私たちが行ったことでした。膨大な情報を頭に入れ、仮定し、情報を整理していく作業が続きました。
現行のウェブサイトのサイトマップをつくり、全体像を把握することにはじまり、統合報告書やコクヨ100周年の社史、各事業のカタログや自社で発行している冊子などを読み込み、徹底的にインプットを行いました。
次に、役員、本部長、担当者などキーパーソン総勢約25名へのヒアリングを実施。幾度となく各部門のみなさんへのヒアリングを行わせていただいたことで、事業として、組織としての理解が日に日に深まっていきました。
さらには、オフィスツアーも実施。
東京・品川オフィスであり、現在のコクヨの象徴ともいえる「THE CAMPUS」を、ご案内いただくとともに、各事業部の商品やサービスの開発者が、自らの手がけた商品や、設計した空間事例について、熱を込めて語ってくださいました。
その語り口は驚くほどマニアックで、どこまでも真剣。
「コクヨとは何か」を肌で感じた瞬間でもありました。


浮かび上がった「人への想い」
ヒアリングを通して気付いたのは、
事業部は違ったとしても、社員のみなさんが口にすることは共通しているということ。
「人のため」「お客様のため」。
すべての原動力の真ん中に、人がいる——。
この気づきは大きな一つの転換点になりました。
点在していた情報に一本の軸が通ることで、コクヨを表現するうえでの指針が見えてきたのです。
この価値観を軸に、歴史の紐解きを徹底的に行い、377ページの方針策定資料を作成し、提案。
情報設計や編集の基盤を固めました。

【記事の最後に、資料ダウンロードのリンクがあります。】
3. 情報設計フェーズで見えてきた等身大のコクヨらしさ
情報設計のフェーズで私たちはまた別の壁にぶつかります。
プロジェクト全体を貫くコンセプトは、「人中心」である。
ヒアリングを通して得たこの気づきは、大きな指針となりましたが、それだけでは何かが足りない、なぜかコクヨを表現しきれていないのです。
コピーを考え抜いてWFに入れ込んではみるものの、一番遠く感じたのは、何を言うかではなく「どう言うか」、つまり言い方の部分でした。
この問題解決の糸口をつかんだのは、CD・ADの米道でした。
「第4次コクヨグループ中期経営計画」プロジェクトとウェブの情報設計を並行して進めていた時期で、黒田社長とお話しする機会が多くあったタイミングでした。
黒田社長はじめ社員の方々の自然体な姿に触れるなかで浮かび上がったのは、「関西弁、そして親しみやすい」というイメージ。ウィットに富んだ、オープンで親しみやすい個性は、まさにコクヨそのものでした。
大阪を拠点とする企業としての「キャラクター性」。それこそが、今まで綿密につめてきた方針から抜け落ちていた要素でした。
この発見は、チームメンバーの凝り固まった思考を大きく転換させるターニングポイントに。以降のサイトデザインやコピーのトーン&マナーをはじめ、撮影、編集方針に至るまで、あらゆる側面に影響を与えることになりました。
※詳しくは「Vol.2 コーポレートサイト編」でご紹介します。
4. 対話を重ねて築く信頼──伴走と合意形成のプロセス
小さな積み重ねが、大きな前進を生む
このプロジェクトの最大の難関は、多数のステークホルダーとの合意形成でした。
トップダウンではなく、あらゆる意見を尊重し、納得に至るまで話し合う姿勢をとっていたため、議論の場では常に新たな課題が浮かび上がっていました。
そんな中、鍵となったのが「課題解決を継続的に繰り返すサイクル」です。大規模な課題を一挙に解決する大きなソリューションではなく、毎回の対話のなかで生じる細かな課題や不一致に対し、その都度、解決策を提示しました。
また、チャットやメールでは伝えきれない細かなニュアンスも、対話によって解消。多いときには、週5回の定例に加え、1日4~5回のMTGが続いた時期もありました。非効率に見えても、今振り返ればクライアントやパートナーとの信頼関係を築くためには不可欠なプロセスでした。
こうした愚直で細やかな合意の積み重ねが、最終的に大きな信頼とプロジェクトの前進につながったのです。
「No」と言わずに前向きな解決策を提案する
PMの楠本は、こう振り返ります。
「できるだけ"No"と言わず、常に次のソリューションを提案することで、クライアントやパートナーの理解も得られ始め、プロジェクトがスムーズに動き始めた瞬間がありました。
もちろん、コクヨさんの力が大きかったことは言うまでもありません。プロジェクトメンバー間の意見がなかなか擦り合わないとき、間に入り、建設的な議論へと導いてくださる場面も多々ありました。
ものづくりを行う企業として、関わる人全員にリスペクトを持ってくださっているからこそなのだと感じました」
5. おわりに
こうして完成した新たなコクヨの新たなウェブサイトは、
「コーポレート」「プロダクト」「マガジン」「スペシャルコンテンツ」という
4つの性質を持つものとなりました。
このウェブリニューアルは、mountだけの力で成し遂げられたものではありません。関わってくださったすべての方に、この場を借りてお礼申し上げます。
続く Vol.2 では、「コーポレートサイト領域」の制作について、より詳細な舞台裏をご紹介しています。ぜひご覧ください!
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取材・文=堀江由利子(mount inc.)