2026.10.1

形のないサービスを、WEBサイトでどう表現する?|建築設計・法律・不動産テックなどから見る5つのアプローチ

形のないサービスの価値を、Webサイトでどう見せるか。 仕事の考え方を言葉にする。人を見せる。利用者の声を集める。ひとつの象徴に置き換える。組織の価値観から世界観をつくる。 今回は、mountが手がけた制作事例から、どのように整理し、Web上で表現してきたのかをご紹介します。

目次

なぜ、形のないサービスは伝わりにくいのか

コンサルティング、法律、設計、投資、クラウドサービス。こうした無形商材は、手に取って確かめることができません。Webサイトを訪れた人は、言葉や写真、動きといった間接的な手がかりから、その価値を想像するしかありません。
そのため、サービス内容や実績を正確に並べても、「他と何が違うのか」「なぜここに頼むのか」が伝わりにくいことがあります。情報を増やすほど、かえって特徴が埋もれてしまうことも少なくありません。

大切なのは、説明を尽くすことよりも、『何を見せれば、このサービスの価値が伝わるのか』を決めることです。その答えは、サービスの性質や、誰がどんな場面で選ぶのかによって変わります。以下の5つの事例では、それぞれ違う「見せるもの」をご紹介します。

01|建築設計事務所の「考え方」を見せる — SUPPOSE DESIGN OFFICE

建築設計事務所のWebサイトでは、完成した建築物を並べることで実績を伝えられます。一方で、作品だけでは、どのような考え方で建築に向き合っているのかまでは見えにくいものです。写真が美しいほど、「完成品のカタログ」として見られてしまうこともあります。

谷尻誠さんと吉田愛さんが率いるSUPPOSE DESIGN OFFICEのコーポレートサイト制作では、まず数か月にわたる対話を重ね、日々の仕事のあり方を整理しました。そこで見えてきたのは、この事務所の仕事が、常に「何かと何かをつなぐこと」で成り立っているということです。

・場所と動きをつなぎ、状況を生む
・条件と発想をつなぎ、価値を生む
・建築と世の中をつなぎ、景色を生む
・人と人をつなぎ、化学反応を生む


この4つを束ねる言葉として生まれたのが、「バラバラなまとまり」というコンセプトです。異なる要素が、バラバラのままひとつの建築や景色にまとまっていく。そのプロセスこそが、この事務所らしさだと考えました。

「+」と「=」で、思考の流れを見せる

Webサイトでは、プロジェクトを構成する要素を「+」でつなぎ、その先に生まれるものを「=」で表現しました。この2つの記号を、サイト全体のデザインのアクセントとして使っています。
サイトの構成は、プロジェクトと事務所そのものが中心に見える、シンプルなものにしました。建築写真は、どのデバイスでも大きく見られるようにしています。
完成したものだけでなく、その背景にある思考まで見せる。SUPPOSE DESIGN OFFICEでは、仕事の進め方そのものを、その事務所らしさとしてWebサイトに落とし込みました。

02|法律事務所の「専門性」を、人から伝える — Isshiki & Partners

法律事務所のWebサイトでは、専門領域や経歴、実績など、多くの情報を掲載できます。ただし、法律のように形のないサービスでは、「誰に相談するのか」という、人も大きな判断材料になります。
Isshiki & Partnersは、米国弁護士の一色太郎さんと日本の弁護士の一色和郎さんによる共同事務所です。お二人はそれぞれ10年以上にわたり、国際紛争案件に注力してきました。事務所の設立は、強い決心のもと踏み出す、新しいスタートです。ブランディングとWebサイト制作では、この新しい局面をどう伝えるかがテーマでした。

「二人の言葉。二人の文字。二人の表情。二人の姿勢。」サービスを提供する「人」から伝える。

サービスを提供する人そのものを、Webサイトを構成する重要な要素として扱っています。

03|不動産サービスの価値を、「利用者の声」から見せる — Facilo

不動産仲介業務を支援するクラウドサービス「Facilo」。シリーズB資金調達の特設サイトでは、機能を説明するだけでなく、Faciloが不動産業界の中でどのように受け入れられているのかを伝えることがテーマの一つでした。
コンセプトは、「不動産業界への感謝と企業の今を編集し、未来への期待を描く特設サイト」。不動産業界と投資家の両方に向けて、感謝と企業のビジョンを形にすることを目指しました。

そこで中心に置いたのが、仲介会社100社の声です。特設サイトには、仲介会社100社の声のほかに、投資家との対談や、Faciloのこれまでとこれからをたどるコンテンツも収めています。写真・映像と執筆は外部のパートナーとともに制作し、データとストーリーを組み合わせて構成しています。

自分たちで価値を語るだけでなく、「誰に、どんな変化を生み出しているのか」を利用者の言葉から見せる。

機能だけでは捉えにくいFaciloの立ち位置を、利用者の言葉から具体化しています。

▲仲介会社100社の声

04|企業成長を支えるプラットフォームの仕組みを、「象徴」に置き換える — W4Partners

W4Partnersは、デジタル企業の産業成長プラットフォームです。企業同士をつなぎ、その成長を支援するという、写真だけでは表現しにくいサービスにおいて、Webサイトでは、シンボルマークに込められた「企業が集まり、輝き・結晶をつくる」という考え方を、ロゴアニメーションとして表現しました。

シンボルマークに込めた考え方を、ロゴアニメーションに

Webサイトでは、シンボルマークに込められた「企業が集まり、輝き・結晶をつくる」という考え方を、ロゴアニメーションとして表現しました。複数の企業が結集し、一体となって価値を生み出す。その様子を、ロゴの動きで示しています。
W4Partnersは、「デジタルは人を幸せにするための便利な道具。わたしたちはデジタルの恩恵を日本の隅々にまでお届けしたい」という想いのもと、幾千の企業をつないで新しいイノベーションを生み出すことを目指しています。ロゴアニメーションは、その「つなぐ」という事業の考え方を表しています。
サービスが生み出す関係性や価値を、ひとつの象徴に置き換える。ロゴと動きを通して、事業の考え方を直感的に伝えています。

05|投資活動の背景にある「価値観」から、組織全体を見せる — Yamauchi No.10 Family Office

Yamauchi No.10 Family Officeは、資産運用や投資活動などを通じて社会への貢献を目指す組織です。Webサイトでは、事業内容を順に説明するのではなく、任天堂創業家として受け継がれてきた歴史や価値観を起点に、これからの活動への「決意表明」を中心に据えました。

その考え方を、ロードムービーのようなストーリーと、ゲーム画面を思わせる世界観で表現。
・チャレンジ
・独創
・遊び心

といった価値観を、コピー、アニメーション、サウンドを含む体験として構成しています。

言葉と遊び心、二つの軸でつくる

制作では、次の2つに力を注ぎました。
1. 力強い言葉:本音の決意表明として、受け継がれてきた精神とこれからの使命を具体的に伝えるコピーを開発
2. 遊び心とチャレンジ精神の具現化:ゲーム画面のような世界観、ストーリー性のある展開、ワクワクする音楽を組み合わせる

ゲームのような世界をつくるために、270種類以上のオブジェクトを制作し、専用のモデリングツールと配置ツールを開発しました。PCとスマートフォンのどちらでも、同じ世界観を体験できます。
このサイトは、D&AD Awards 2021 Wood Pencil、One Show 2021 Merit、NY ADC 2021 Bronze、Awwwards Site of the Dayなど、海外のアワードでも評価をいただきました。
複数の事業を一つずつ説明するのではなく、「なぜこの組織が存在するのか」から全体を組み立てる。事業の背景にある価値観を、ひとつの世界観として伝えた事例です。

サービスによって「見せるべきもの」を変える

今回の5つの事例では、見せているものがそれぞれ異なります。
形のないサービスでは、説明する情報を増やすだけでなく、何を見せることでその価値が伝わるのかを考えることが重要です。その答えによって、必要となる表現も変わります。

仕事の考え方を見せる、人を見せる、利用者の声を集める、象徴や価値観から世界観をつくる。それぞれ異なるアプローチで、企業やサービスの見えにくい価値をWeb上に表現した5つのプロジェクトをご紹介しました。

つくることではなく、課題の解決が目的です。ぜひお悩みからお聞かせください。

お問い合わせ

新着記事やお知らせ、イベント情報を、
メールでお届けしています。

ニュースレター