2026.9.10
言葉に合わせてデザインする。
翻訳だけでは終わらない、
多言語対応した6つのプロジェクト
言語が変わると、画面の中では想像以上に多くのことが変わります。文章の長さ。改行の位置。文字の密度。余白の見え方。日本語では一行で収まった言葉が、英語では二行になることもある。中国語や韓国語では、文字そのものがつくる画面の重心も変わります。
そこで必要になるのは、翻訳された言葉を置くことだけではなく、その言葉が置かれた画面をもう一度見ることです。ときには、そもそも言葉で伝えるのが一番いいのかまで考える。
小さな違和感を一つずつ拾い考える。弊社では現在、「多言語対応」に分類されるプロジェクトが40件あります。
今回はその中から、新旧6つの仕事を取り上げます。言葉が変わる。場所が変わる。見る人が変わる。そのたびに、何を変え、何を変えずに届けてきたのか。多言語対応という切り口から、mountの仕事を見ていきます。
目次
6つの仕事、6つのアプローチ
・AYANA BALI|4言語・約800ページ。改行から運用まで、すべてを同じ基準で。
・Shanghai World Financial Center|建築の思想そのものを、Webの構造に。
・UNIQLO|NYC NOW|届ける街へ行き、その街の「今」からコンテンツをつくる。
・TOYOTA|Get Going Challenge|世界中の人が、読めるだけでなく参加できるようサイトを。
・KUBOTA FUTURE CUBE|英語版も一文字ずつ文字組みし、文字量に合わせてレイアウトや映像まで調整する。
・星のや|翻訳する前に、その土地でしか得られない価値を捉え直す。
今回取り上げる6つのプロジェクトに共通するのは、翻訳を完成地点にしないこと。何を、誰に、どう届けるのかを考え、必要なら仕組みからつくる。最後まで目を配り、つくり切ることです。
01|4言語、約800ページ。おもてなしを込めたコンテンツ制作
AYANA BALI
翻訳にもこだわった多言語対応
世界中から旅行者が訪れる、インドネシア・バリ島の大型リゾート「AYANA BALI」。90haの敷地に4つのホテル、30のレストラン&バー、14のプールなど、多数の施設と体験を抱える大規模なリゾートです。Webサイトのリニューアルでは、その膨大な情報を約800ページにわたって展開。さらに日本語・英語・中国語・韓国語の4言語に対応しました。
多言語にこだわって作ったのは、世界中から旅行者が訪れるAYANAだからこそです。4言語に対応するために用意したのは、翻訳データだけではありません。日本語・英語・中国語・韓国語、それぞれにデザインフォーマットを作成し、翻訳後の文章を実際の画面で確認。改行調整まで、目で見て整えていきました。
そして、デザインフォーマットだからこそすべてを同じ基準にできるように。翻訳者やCMSへの入力者、デザイナー実装者の細かいチューニングを経てどの言語で見ても気持ちの良い仕上がりになるよう、4言語すべての言葉のデザインにエネルギーを注いでいます。

4言語分のコンテンツ管理を支える独自のCMS
さらに、4言語・800ページ以上を継続して更新できるよう、Googleスプレッドシート/Driveからページを生成する独自CMSを開発。4言語すべてのテキストと画像をひとつのシートで管理できるようになりました。多言語サイトでは、一つの言語だけをきれいに仕上げても十分ではありません。単純な機械翻訳でなく、多言語での1からの翻訳とテキストコントロールを効率的に行えるように開発されました。日本語だけでなく全言語このシートを使いながら目で見て何度も調整をかけています。
すべてを同じ水準まで整える。言葉が変わったあとの見え方から、その先の運用まで、AYANA BALIでは、たくさんの情報を一つひとつ積み上げながら、つくり切りました。

・AYANA BALIのコンテンツ制作は、こちらの記事でもご覧いただけます。
02|海外に届けるなら、体験のつくり方から考える。
Shanghai World Financial Center


Flashの時代から変わらない、英語での文字組み
2008年、森ビル初の海外プロジェクトとして上海に竣工した、地上101階・高さ492mの超高層複合施設。Webサイトでは、施設の思想を伝える写真と言葉、すべての施設情報を縦方向に積み上げ、ビルそのものを思わせるインターフェースをつくりました。これは、SWFCが掲げる「垂直庭園(複合)都市」という考え方と、101階建ての建築そのものをWeb上で表現するためです。
また、エレベーターインターフェイス着想から、日英中3言語を縦に積み上げ、ナビゲーション操作で縦の移動を実現しました。
建築の考え方そのものをWebの構造へ置き換える。画面を縦に進む行為と、101階建ての建物を上へと巡る感覚を重ねることで、その場所を知らない人にも施設のスケールや思想が伝わるように設計しています。
現在のようなレスポンシブサイトが当たり前になる以前のFlashでつくられていた時代から言語によって文字の組み立てを工夫しています。多言語対応を「別言語のページを用意すること」よりもずっと広く捉える姿勢は、変わりません。
03|ニューヨークの「今」を、そのままWebに表現した。
UNIQLO|NYC NOW
UNIQLO NYC 5番街店・34丁目店のオープンに向けて制作したブランドサイト「NYC NOW」。
オープン前からカメラマンを現地へ派遣し、UNIQLOの広告がニューヨークの街をジャックしていく様子を撮影。撮り溜めた映像や、ストア、イベントの情報も日々アップロードしていき、それらのリアルタイムな情報を、ニューヨークの地図を背景にしたタイムラインへ更新し続けました。オープン後には、それまで撮りためた映像を地図上にまとめUNIQLOがニューヨークに存在する「今」そのものを見せる映像を制作し、Webサイトも同時にリニューアル。
最終的には、ニューヨークの地図上にUNIQLOの3店舗が配置され、ニューヨークの街でのUNIQLOの存在感を示すWebサイトとなりました。
※過去にFlashで制作されたWebサイトです。


04|読むだけではない。世界中の人が「参加できる」ようにする。
TOYOTA|Get Going Challenge
TOYOTAのグローバルキャンペーン「Get Going Challenge」は、自分の夢に向けて挑戦する若者をサイト上で募り、総額100万USドルでサポートするプロジェクトでした。
弊社では、英語・中国語版のサイト制作を基本に、企画を印象付けるオープニングムービーや投稿・投票のインターフェース、夢について書かれた文章を可視化するモーショングラフィックス、結果を伝えるレポートコンテンツを制作しました。
ここで必要だった多言語対応は、「読める」ことだけではありません。自分の夢を投稿できる。誰かの挑戦に投票できる。企画の熱量を直感的に受け取れる。言語や国が違っても、全員が同じキャンペーンへ参加できるところまで体験を設計する。多言語サイトは情報を届ける器であると同時に、国を超えて人を動かす仕組みにもなります。操作や動きまで含めて考えると、翻訳の外側にもデザインすべきものが広がっていきます。


05 | 英語版も、一文字ずつ。言葉に合わせて画面をつくり直す。
KUBOTA FUTURE CUBE
「KUBOTA FUTURE CUBE」は、日本語・英語の2言語で展開されています。
英語版では、翻訳した文章をそのままレイアウトに流し込むのではなく、一文字一文字すべて文字組みを調整。さらに、英語になったことで変わる文字のボリュームに合わせて、レイアウトや映像のトリミングまでを細かく見直しました。たとえ同じ内容でも、日本語と英語では文章の長さも、そして言葉が画面の中で占める面積も変わります。日本語版で整っていたバランスをそのまま使うだけでは、意図していた文字と映像の関係や視線の流れまで変わってしまいます。
そのためPC・スマートフォンそれぞれで動きや映像、モーションを確認し、英語版としてもう一度仕上げる。翻訳だけでなく、言葉に合わせてデザインしました。KUBOTA FUTURE CUBEの多言語対応には、その細かな調整が積み重なっています。



06|その土地でしか得られない体験を、言葉と写真から組み直す。
星のや

「星のや」のWebサイトでは、延べ10か月をかけ、6施設すべてのコミュニケーションを見直しました。
現地を訪れ、ヒアリングや議論を重ねながら、これまであった概念や事実を一度見直し、「星のやとは何か」「他の宿泊施設と何が決定的に違うのか」から整理。そこから、写真と文章によるコンテンツ、予約へつなげるUI、デザイン、実装までを一貫してつくっています。
サイトは日本語・英語で展開され、制作クレジットには英語に加えてバリ語の翻訳も記載されています。宿泊施設の魅力は、設備のスペックだけでは伝わりません。その土地の空気、過ごし方、文化、そこに身を置いたときに初めて感じるものまで、どう言葉と写真にするのか。海外の人に向けたページをつくるときも、日本語の情報をそのまま移すのではなく、まず伝えるべき価値そのものを捉え直す。翻訳より前に、「何を伝えるか」を研ぎ直す仕事があります。



最後の一言語まで、つくり切る。
2008年のShanghai World Financial Centerから、UNIQLOのニューヨーク進出、TOYOTAのグローバルキャンペーン、星のや、そして現在のAYANA BALIまで。
時代も、業界も、Webの技術も違います。けれど、6つの仕事を並べてみると、共通していることがあります。
届ける場所が変われば、必要な情報を考え直す。言語が変われば、文字の長さや見え方まで確かめる。決まった方法を当てはめるのではなく、何を、誰に、どう届けるのかを見ながら、その仕事に必要な方法を選んでいく。
ときには一文字を調整し、ときには800ページを管理するCMSをつくる。地図をつくることもあれば、映像を撮り続けることもある。
多言語サイトをつくることは、同じ内容を別の言葉で用意することだけではありません。異なる言葉を使う人、異なる場所にいる人に向けて、同じ質の体験をもう一度つくること。そして、必要なら、その仕組みからつくる。
最後まで目を配り、手を動かし、つくり切った6つのプロジェクトをご紹介しました。
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