2026.9.16
文字詰めから、「見る力」を育てる。
mountで続けてきたタイポグラフィの取り組み
mountでは社内で、文字詰めをはじめとしたタイポグラフィのトレーニングを継続して行っています。デザイナーだけでなく、プロジェクトマネージャーやデベロッパーも参加し、役職を問わず文字に向き合う機会をつくってきました。今回の記事では、これまで行ってきた取り組みをご紹介します。
それぞれの取り組みを振り返りながら、弊社のデザイナーにも、その中で感じた変化を聞きました。

目次
1. 文字詰めトレーニング
最初に行っていたのは、短いコピーを使った文字詰めの練習です。一日ひとつ、Adobe Illustratorを使用して5分間で文字詰めを行い、社内でレビューする。指摘があれば、翌日も同じコピーに取り組みます。



2. 短いコピーから、長文の文字詰めへ。
短いコピーの文字詰めから、長文の文字詰めへと広がりました。全員が同じ文章を使い、一定の条件の中で組版を行います。短いコピーでは主に文字と文字の間を見ていましたが、文章になると、見るものも増えていきます。行のまとまりや改行、文章全体の見え方まで含めて調整していきました。
文字詰めから文章全体を組む課題へ広がったことで、見る対象も、一文字ずつの間隔から文章全体へと変わっていきました。



3. タイポグラフィを本から学ぶ
さらに、タイポグラフィに関する本を各自で選び、なぜその本を選んだのか、読んでどんなことを感じたのかを共有する取り組みも行いました。実際に文字を組むことに加えて、タイポグラフィについて知るためのインプットも増やしていきました。
本を選ぶ取り組みについては、自分で本を探すことに加えて、ほかのメンバーが何を選んだのかを見ることも新しい入口になりました。自分では手に取らなかった本や、知らなかった領域に触れることで、タイポグラフィを学ぶ範囲そのものが広がっていきます。

4. 「いい」と思うタイポグラフィを集める
毎日ひとつ、自分がいいと思った組版やレイアウト、タイポグラフィが生きているデザインを探し、短いコメントを添えて共有する取り組みも行いました。
文字そのものだけでなく、グラフィックやレイアウトの中で文字がどう使われているかを見る。実際に手を動かして組むだけでなく、日常的にさまざまなタイポグラフィに触れる機会を増やしていきました。この取り組みでは、見つけたデザインに対して「どこがいいと思ったのか」を自分の言葉で言語化することがとても重要です。




5. AIを活用した文字詰めレビュー
現在は、文字詰めのレビューにも新しい方法を試しています。これまで人が行ってきたレビューやコメントをもとに、文字詰めに対してAIがフィードバックを返す仕組みを開発しています。
文字詰めのレビューや判断を学習させ、将来的にはレビューする人がその場にいなくても、練習を続けられる状態を目指しています。これまで人から受け取ってきたフィードバックを、継続して練習できる仕組みへつなげる取り組みです。

文字詰めから、見る範囲を広げていく
最初は、短いコピーの文字と文字の間隔を見ることから始まった取り組みでした。毎日欠かさず続けるうちに、見る範囲は一文字ずつの間隔から、文字列全体のバランス、文章として組んだときの見え方へ。さらに、実際のデザインの中で、文字とグラフィックがどう組み合わされているか、レイアウトの中で文字がどう置かれているかまで、少しずつ広がっていきました。
文字詰めから始まった取り組みは、文章を組むこと、タイポグラフィについて学ぶこと、そして良いデザインを見て考えることへと発展しています。現在は、AIを活用したレビューの仕組みづくりにも取り組んでいます。
形を変えながらも、これらを毎日続けていることは変わりません。
ここからは、実際にこの取り組みを続けてきた若手デザイナーに、日々の実践を通して感じた変化や気づき、そしてこれからについて聞きました。
実際に取り組んできたデザイナーに聞きました
メンバー
話し手

山﨑 末鈴
Des
[プロフィール]
高校卒業後、デザイン系の専門学校でグラフィックデザインを3年間学び、新卒でmountに入社しました。
ウェブ制作はまったくの未経験からのスタートです。
ここまで紹介してきた文字詰めやタイポグラフィの取り組みを、実際に続けてきたデザイナーにも振り返ってもらいました。取り組みを通して感じた変化や、普段の制作とのつながり、これから続けていきたいことについて聞きます。
——これまでの取り組みの中で、特に印象に残っているものはありますか?
文字詰めを続けて、文字を見る感覚が変わった
ーー文字詰めは、これまでの中でも一番長く続けてきた取り組みです。もともと学校ではあまり習う機会がなかったので、まずはシンプルに、基礎の力がついた実感があります。
続けているうちに、普段歩いているときでも、街中の文字を見て「ここ、字間がガタガタしているな」と気づくようになりました。以前だったら、そのまま見過ごしていたと思います。
文字詰めは、レイアウトのように表現の幅が大きいというより、文字がきれいに読めるか、全体で見たときに字間が自然かをひたすら見るもの。繰り返すうちに、文字を詰める技術だけでなく、文字を見る感覚そのものが変わってきました。
「好き」を集めることで、自分の好みが見えてきた
ーーもうひとつ印象に残っているのが、タイポグラフィを探して共有する取り組み。
もともと「このデザイン好きだな」という感覚はあったけれど、なぜ好きなのかまでははっきりしていませんでした。いろいろ見る中で、文字の置き方や余白、レイアウトまで見るようになって、自分は少しかっちりしていて、余白もあるような文字組みやグラフィックが好きなんだな、と分かってきました。一方で、ほかのメンバーは装飾的だったり、動きのある配置を選んだりする。選ぶものに、その人の個性が出ます。
他の人が何を選ぶのかを見ることで、逆に自分の好みも分かりやすくなりました。
——こうした練習は、普段の制作にもつながっていますか?
制作の最後の詰め作業では特に、より自信を持って取り組めるようになった
ーー「この案件のここで活きた」とはっきり言えるというより、少しずつ意識が変わってきた感覚に近いです。文字詰めでいうと、サイト制作の最後の文字詰めの作業部分には、以前よりも自信を持って取り組むことができるようになりました。
方向性を考えるときの視点がひとつ増えた
ーータイポグラフィという目線でデザインを見ることも、前より意識するようになりました。自分の好きなものが少し明確になったことに加えて、いろいろな人の事例を見ることで、文字組みやレイアウトの引き出しも増えたと思います。
制作の中で考えるための視点が増えたと思います。これからもいろいろなデザインを見る量を増やしながら、文字やレイアウトについての知見や引き出しを増やしていきたいです。
——これから続けていきたいことはありますか?
これからも、「いい」と思うものを蓄積していく
ーー昔からあるいいとされているものはもちろん、今の若い世代のデザイナーがつくる、挑戦的な作品にもアンテナを張ってたくさん吸収して、いろんな「いいな」って思うものを自分の中にストックしておきたいです。実際に案件を担当するときに、そこから引き出して活かせるようにしていきたいです。
——これからmountに就職を考えている、興味を持っているデザイナーさんに、この取り組みについて伝えたいことはありますか?
文字を大切にすることを、日々の鍛錬につなげる
ーーmountは、文字をすごく大切にしている会社だと思います。Web制作会社で、ここまで文字の教育やトレーニングに向き合う環境は、あまり多くない気がします。細かなことだけど、最後はサイト全体のクオリティに響いてくる。そこを鍛えられる環境はすごくいいと思います。
Webサイトは、かなりの部分が文字で構成されています。文字を通して情報を伝える場面も多いので、文字の扱いはサイト全体のクオリティにも関わると思っています。以前イムさんが勤めていた会社では、エンジニアも文字詰めの良し悪しを判断できたそうです。デザイナーだけではなく、実装する側もサイト全体の機能と美しさを考えながらつくる。その中に、文字もひとつの要素として入っているんだと思います。
文字を見る目を鍛えながら、それを実際のWeb制作でも使っていける。そういう環境にいることが、デザイナーとしてすごくいいことだと思います。