2026.7.31
ロゴタイプの依頼から、
WEBのコミュニケーション設計へ
── AFURI新規事業「AFURI BREWING」
── 依頼はロゴ1点だった。そこから始まった、AFURIとmountの対話
「休肝日だけど、呑んじゃいそうです」と対談中に幸せそうな笑みを浮かべる中村代表、テーブルにはできたばかりのビール。やがて両者のつくり手の話は、つくることそのものの核心へと降りていった。
らーめんで有名な「AFURI」と、そのAFURIの新規事業であるクラフトビール「AFURI BREWING 」のブランド兼ECサイトを手がけたmount inc. 。立場も、扱う素材もまるで違う両社が、対話でたどり着いたのは「同じつくり手」という静かな確信だった。

メンバー
スピーカー

林 英和
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中村代表
中村 比呂人 | AFURI株式会社|(取締役代表)
文

楠本 莉沙
Dir
撮影

井出 裕太
Des
はじまりは、AI からの紹介
意外なことに、2 社を引き合わせたのはAIだった。

中村代表
もうシンプルに、ChatGPT ですね。
AFURI の新規事業でクラフトビールを作ります。ロゴマークをお願いしたい。いいクリエイティブ会社をいくつか挙げて。
——そうAI に投げかけ、付き合いのなかった会社を新規開拓するなかで、2、3社目に名前が挙がったのが mount だったという。
「なぜ我々に、と思ったんです」と林。
だからこそ最初のオンライン打ち合わせは、仕事の話より先に「本当に弊社でいいですか」という自己紹介から始まった。それでも中村代表の心は、早々に決まっていたという。

中村代表
ファーストミートの時に胸の高鳴りが顔に滲み出てましたね。
そして社内で検討してすぐに決定しました。

決め手は、文字組み千本ノック
候補の会社は他にもあった。
大手代理店出身のチーム、著名なクリエイター集団。
そのなかでも心を動かしたのは、派手さの対極にあるものだった。
決め手は、mount が社内で「文字組みの千本ノック」のような基礎トレーニングを地道に続けているという話だったという。
空中戦の派手さではなく、
地味な反復のなかに宿るもの。
中村代表はそこに賭けた。

中村代表
一見、派手さはないけれど、10年後も20年後も普遍的な、そぎ落とした力強さ。すっとそこにある感じが欲しかった。

林
字間が何ピクセル、という調整をずっとやり続ける。文字通り、ずっとです。でも、その違いのほとんどが作り手の僕らにしか分からないぐらいのことです。
そして中村代表もまた、
同じ手ざわりを別の言葉で語る。

中村代表
分かりやすさが必ずしも良いとは限らない。本質は装飾の下に隠れて見えづらい。長い風雪に耐えたものだけが、残っていく。
2人は同じことを違う言葉で語り始めていた。

ピクセル単位の「引っかかり」、その「発明」
プロジェクトの山場は、日本語のロゴタイプだった。すっと流れるような書体の最後に、ほんのわずかな“癖”を仕込む。中村代表はそれを「発明」と呼ぶ。

中村代表
あるかないか分からないぐらいの引っかかり。でも、それが散りばめられていると全体としてグッとくる。
自分一人でやったら、15年かかってもたどり着かなかったと思う。

綺麗なだけでは足りない。普通っぽさのなかに、胆力のようなものがちらりと覗く。その微差は、ともすれば誰にも気づかれない。だからこそ、中村代表がそこに気づいて共感してくれたことはmount にとって、何より胸が熱くなった瞬間だった。
これはロゴに限った話ではない。全フェーズに当てはまることだった。
なかでも色濃くmount の記憶に残っているのが、実装提案で起きたことである。
今回の実装は、派手な演出を抑え、インタラクションの一つひとつを地道に詰めていった。喜んでもらえないかもしれない、分かってもらえないかもしれない。その不安が毎日襲いかかった。
ところが中村代表は、一発目からその細かな機微に気付き、共感してくれたのだ。
エンジニアの須多の驚きは、やがて熱に変わり、目頭を熱くさせた。

林
本当に、本気でやっていても周りに気づかれないことが多い。
そこに気づいていただけたことは節々ですごく嬉しかったですね。

速さだけじゃない、「正解」を示す力
中村代表はmount の仕事の精度に舌を巻く。

中村代表
弊社からニュアンスをお伝えしたものを理解していただいたら、次にはもう正解が全部並んでいた。
もう何ラリーかあるだろうと思っていたのに、次のターンでもうそこにたどり着く。ものすごい精度で。
そこには、魔法のように一瞬でたどり着くわけではない。表に出ない検証の反復が、静かにそれを支えている。中村代表が舌を巻いたのは、その仕事ぶりが、ちゃんと自分のもとへ届いていたからだ。

中村代表
問題のありかを、医者のように探り当ててくれる。
写真の縦横比をめぐっても、mountは複数案を検証し尽くしたうえで「絶対に、これがいいです」と力強く差し出した。

中村代表
第一線にいる方々が圧倒的な解像度を持って出した確信に、ここは絶対に従った方が良いと瞬時に悟った。すごく心強かった。
林は続ける。

林
ただ自分たちのエゴでそれがいいっていうことは、僕らは絶対にしない。果たすべき目的を果たせるなら『こっちです』ということが、自信を持って言えます。
その言葉と態度、それまでの経緯を含め、中村代表は深く頷いた。


つくり手は、毎日悩み、悶々としながら同じ机に向かう。その内側を言葉で掬い上げてもらえることは、めったにない。中村代表は、「皆さんと一緒に仕事ができている今が、とても嬉しいです」と以前に話したという。互いの仕事への敬意が、ここで静かに交差した。
みんなで撮った、一枚
写真は、パートナーである外部の撮影チームだけに依頼をしなかった。これからAFURI社内で運用をしていくために、持続可能なクオリティをどう保つか
—— その問いから、AFURIの社内フォトグラファー佐藤氏(AFURI 株式会社・フォトグラファー)を起用し、二人三脚で撮影設計を組み立てた。その場だけを見れば工数は増える。それでも「長く、いいクオリティで」という本来の目的を、mount は優先した。
「久しぶりに、自分らしい写真をまた撮れた。ヒリヒリした緊張感のある現場がやっぱり楽しい」そう語った佐藤氏は興奮冷めやらぬまま、30 分も語り続けたという。



今回、キービジュアルの撮影では「阿夫利山を再現しよう」というコンセプトのもと、事前に山まで足を運び実際に阿夫利山にある木々を確かめ、それらと同じ品種のものを本番用に用意した。
そして、使うのはその木の影だけ。

中村代表
一流の仕事ってこういうことね、と。テクニックだけじゃない、センスのある人たちが手間暇かけて一番ふさわしいものを愚直に選ぶ
トップを飾る阿夫利山のドローン写真も、時間帯ごとに変わる光と影を読みながら、ヤンス氏が何度もロケハンと撮影を重ねたどり着いた一枚だ。
早朝3時から出向いても良い顔を見せてくれない山の表情には、粘り強さと運強さどちらもが揃わなければいけなかった。



Photography
yansu(YOIN inc.)@yansukim
佐藤 竜太(AFURI 株式会社)
Flower Coordinator
原田陽子(75(nago))
Prop Stylist
ogawa masumi ( YOIN inc. )
wataru miyashita ( YOIN inc.)
同じ、“つくり手” として
対話が深まるほどに、2 人は互いの仕事に自分の影を見ていく。
味を作る、空間を作る、体験を作る。デザインを組む、言葉を選ぶ、実際に動かす。
扱うものは違っても、妥協しない職人気質、無数の条件のなかでクオリティを追い込む執念、そして「課題解決の先に、お客さまの喜びを置く」という姿勢は、驚くほど重なっていた。
ケミカルな原材料に頼らない味づくり。お客さまにいい体験をしてもらうために、まずスタッフが心地よくいられる仕組みから整えるという発想。セントラルキッチンという大がかりな挑戦も、その延長線上にある。

林
妥協を許さない美学があって、ちゃんとそれを追求していく。
完全に同じつくり手だと、おこがましいですが感じました。
中村代表もまた、マウントへの敬意を惜しまない。

中村代表
大谷翔平選手と野球できる野球少年って、幸せじゃないですか。
実際やってみて、本当にそれを感じました。
やりたいことではなく、なすべきことを最優先させてきた先に降りてきた、一番楽しい時間
ずっと頭の片隅で「いつかやれたら」と先延ばしにしてきたことが、ここにきて次々と動き出したという。

中村代表
どうせやるなら、挑戦のほうが面白い。幸運なことに、なすべきことがやりたいことと重なった、このラッキーな期間を楽しんでいます。
その日々のキラキラとした熱量に、mount は応える。

林
その熱量に負けないように、と思って作りました。届くべき人に、ちゃんと届けばいい。

ビールの味づくりにも、ラーメンと同じ哲学が流れている。
中村代表はそれを「バランス芸」と呼ぶ。
こっくりとしたヘイジーIPAの旨味と香りは残しつつ、苦味とアルコール度数は引き算で。
引きすぎれば物足りず、寄せすぎれば飲み疲れる。その絶妙な一点を狙う。

中村代表
クラフトビールをあまり飲まない人が“これなら飲める”と言ってくれて、玄人もうならせる。間口は広く、奥行きは深く。
その狙いは、飲み手にもまっすぐ届いていた。
私がその証明だ。
ビールが飲めない私に気づかせてくれた。「ビールって、こんなに美味しいんだ」と。

ウェブサイトという“器”
実装されたウェブサイトを、中村代表は「ビジュアル経典」と表現した。
側(がわ)が中身を引き上げていく、という実感がそこにある。

中村代表
制服を着たらピシッとするし、スウェットを着たらだらんとゆるむ。あの精度のものに釣り合う中身に、勝手になっていくんです。
ちゃんとした肉体じゃないと似合わない服を与えられた。もう、下手なことができなくなりました。
そう言って天を仰ぐ表情は、ワクワクしているように思えた。

mount も呼応する。

林
器と中身。どんなに中身が立派でも、似合わない器では違和感が残る。だからこそ『こういうものを目指している』という核を何度もヒアリングで言語化し、セントラルキッチンまで視察に出かけ、ふさわしい“器”を立ち上げていった。

見栄えの軽やかさ(心地よさ)と、WEBサイトが「本来軽くあるべき」スピード感(ページ遷移の速さ)という本質の両立を叶えること。「AFURI は軽はずみな気持ちでビールをやっているわけじゃない、本気だ」
——その本気度とAFURI らしいバランス感を、デザイン・実装、写真、そして言葉でも体現することは、絶対だった。
そうして生まれたコピーが、
“ AFURIらしいやり方で、ビールをつくってみたいと思った。”
そして、味わいを射抜く1行 ——
“風のようなビールを。奏でるようなビールを。”

中村代表
自由さや開放感、目には見えないけれど感じるもの。自分はそういうバランスのものが好きなんだな、と確信できた。
Copy Writing
波間 知良子(株式会社サン・アド)


つくり続けるという約束 これから、つくっていくもの
ビールの種類が増え、写真が差し替わり、運用のなかでサイトはアップデートされていく。
そうして少しずつ完成へと近づいていく。「世界一かっこいいサイト」へ。
中村代表の視線は、すでにその先を向いている。「なすべきこと」と「やりたいこと」が重なった今、構想は次々と立ち上がりつつある。
そして、mount はこう託す。「ウェブサイトはこれからも更新し、作りつづけてほしい。応援しています。楽しみです。」次は何を一緒に作れますかね、と林が溢す。

中村代表
一緒にしたいと思うプロジェクトがまだいくつもあるんです。
社交辞令じゃなく。
風のように、軽やかに。けれど、力強く。一杯のビールから始まったこの対話は、まだまだ続きそうだ。

中村代表と社員の皆さんはいつも「握手」の挨拶からはじまる。私はこの光景をみて素直に「いいな」と感じた。
この日は特にそれを思い出した。愛されるものをつくり出す過程にある、「人」の存在。AI が私たちの生活や仕事に大きな影響を与えているこのころ、ものづくりにおいて、私たちはこれからも”手ざわり”を忘れずに続けたい。そう思うのだ。
